抄録
肝血管腫は,肝の非上皮性腫瘍のなかでは最も多い腫瘍で,日常の超音波検査においても遭遇する頻度は高いが,転移性腫瘍など他の腫瘍との鑑別が困難な場合がある.今回我々は,糸ミミズサインと呼ばれている血管腫内部の動きに注目し検討した.方法は,超音波検査で肝血管腫と診断し,造影CTまたはMRIでも血管腫と診断された102例124結節を対象に,血管腫を腫瘤内部の動きの有無で分け,腫瘤の大きさ,内部エコーについて検討した.結果は,内部の動きありが44%,なしは37%,判定困難は19%.動きの有無を判定できた100結節を内部エコーで分けると,高エコー18%,等エコー21%,低エコー9%,混合エコー52%であった.このうち,動きありは混合エコーが最も多く,動きなしは高エコーが最も多かった.また,動きがみられる部位に注目すると,低エコー腫瘤では,腫瘤全体が動いているように観察されるのに対し,混合エコーは腫瘤内のエコー輝度が低い部分で動きが観察できるものが多く,相対的なものと考えられる.また,CT画像と比較したところ,典型的な造影パターンを呈する腫瘤は動きがみられたものが多かった. 動きがみられる場合は,侵襲の少ない超音波検査のみで血管腫と診断可能であると示唆される.