超音波検査技術
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症例報告
非細菌性血栓性心内膜炎が疑われたTrousseau症候群の1例
谷口 京子小谷 敦志谷 加奈子後藤 千鶴橋本 三紀恵河野 ふみえ
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2016 年 41 巻 1 号 p. 24-31

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抄録

【症例】60歳代女性【主訴】左上下肢の麻痺
【既往歴】高血圧
【現病歴】左上下肢の麻痺を主訴に近医を受診し脳梗塞と診断された.その際,不正性器出血と下腹部腫瘤を認め卵巣癌と診断された.入院中に再度脳梗塞を発症しTrousseau症候群が疑われたため卵巣癌の加療目的で当院産婦人科に紹介となった.
【入院時検査所見】入院時血液検査にてD-dimerの上昇,下肢静脈エコー検査で下肢深部静脈血栓症を認め,造影CTにて肺塞栓の合併を認めた.入院時の経胸壁心エコー検査および経食道エコー検査では心内シャントは認めなかったものの,僧帽弁の著明な肥厚を認めた.
【入院後経過】明らかな感染所見は認めなかったため抗凝固療法を行い,治療開始後約5か月後の心エコー検査では僧帽弁の肥厚は縮小を認めた.以上より非細菌性血栓性心内膜炎により脳梗塞を繰り返し発症したものと考えられた.
【考察】脳卒中を発症した悪性腫瘍の剖検報告によると,脳梗塞の原因として非細菌性血栓性心内膜炎(27%)が最も多いといわれている.担がん患者で凝固能の異常高値がみられた場合は本病態を念頭に置き心エコー検査を行う必要があると考える.Trousseau症候群にて卵巣癌に合併した非細菌性血栓性心内膜炎による脳梗塞の1例を経験したので報告する.

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© 2016 一般社団法人 日本超音波検査学会
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