超音波検査技術
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原著
Klebsiella oxytoca腸炎の臨床的特徴と超音波検査による他の細菌性腸炎との鑑別法
三浦 大輔
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2016 年 41 巻 4 号 p. 377-385

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抄録

目的Klebsiella oxytoca腸炎と他の細菌性腸炎の超音波画像や臨床的特徴を比較することで,K. oxytoca腸炎が鑑別可能かを検討した.

対象と方法:2009年9月~2015年8月までに超音波検査(US)を施行した急性腸炎患者で,上行結腸の第2~3層主体の連続性・びまん性壁肥厚を呈し,かつこれらのうち便培養検査にて病原菌が検出された124名(平均年齢26.2±17.0歳,男71名:女53名)をレトロスペクティブに検討した.便培養結果からStaphylococcus aureus群,Campylobacter spp.群,Salmonella spp.群,diarrheagenic Escherichia coli群,enterohemorrhagic E. coli(EHEC)群,K. oxytoca(KO)群の6群に分け,各細菌群の臨床的特徴,最大壁肥厚径や腸管罹患範囲の比較,KO群とEHEC群の超音波画像の比較などを行った.

結果と考察:KO群とEHEC群は同等の最大壁肥厚径を有し[KO群:11.6±1.3 mm (n=7),EHEC群:13.4±2.9 mm(n=13)],他の細菌群よりも有意に高値であった(p<0.05).すなわち,目安として1 cmを超えるような高度な右側大腸壁の肥厚を呈する場合は,EHECだけではなくK. oxytocaによる腸炎を想定する必要がある.また,すべての菌群において上行結腸から横行結腸までの罹患範囲が最も多いという同様の傾向を示したことから,罹患範囲からK. oxytoca腸炎を鑑別することは困難であった.KO群の臨床的特徴は高い発症年齢,高頻度の血便・下血,短い発症–来院時間,高い抗生物質使用歴であったことから,これらもK. oxytoca腸炎を鑑別する一助になり得ると考えられた.

結論K. oxytoca腸炎は,右側大腸の高度な壁肥厚(参考値:>1 cm)を有するという超音波所見があり食中毒を思わせる摂食歴がない場合に疑われ,それに加え抗生物質使用歴があれば抗生物質起因性出血性腸炎を疑うことができる可能性がある.

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© 2016 一般社団法人日本超音波検査学会
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