超音波検査技術
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研究
乳癌超音波診断における3次元超音波検査の有用性
平野 美穂橋本 真澄松田 雅子有賀 智之堀口 慎一郎尾崎 喜一大林 民典
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2016 年 41 巻 4 号 p. 386-394

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抄録

目的:3D超音波(US)による乳癌の腫瘍体積測定の臨床的妥当性,有用性を証明することを目的とした.また,PSC(primary systemic chemotherapy)の治療効果判定法としての3D-USの可能性についても検討した.

対象と方法:対象は2011年4月から2013年8月までに当院にて乳腺超音波検査を施行し,細胞診,針生検または切除生検にて診断が確定された乳腺腫瘍91例91結節.乳腺超音波検査に携っている臨床検査技師8名が高周波リニア型プローブおよび3D型プローブを用いて検査を施行した.検討項目は①トレース断面数の違いによる腫瘍体積計測値,②良性腫瘍と悪性腫瘍の体積測定値,③悪性腫瘍と良性腫瘍の習熟度別体積測定値,④3D-USと摘出標本から算出した体積の乳癌組織型による差,⑤乳癌術前化学療法の効果判定.統計学的検討は①,②はt検定,③はMann–Whitney U検定,④はχ2検定を用い,有意水準5%とした.

結果:①各トレース断面数ごとの体積の差には有意差はみられなかった(p>0.05).②悪性腫瘍の変動係数の最頻値は良性腫瘍より有意に高値であった(p=0.007).③体積計測の変動係数は,検査習熟前の前期では悪性と良性腫瘍間に有意差がみられた(p=0.007)が,習熟後の後期では有意差はみられなかった(p=0.14).④乳頭腺管癌と硬癌との,3D-USと摘出検体から算出した体積には有意な差はみられなかった(p=0.24).⑤2D-USと摘出標本から算出した長径との間に相関関係はみられなかった(r=0.19, p=1.00),一方,3D-USと摘出標本から算出した体積との間には強い相関係数を認めた(r=0.86, p=0.58).

結語:3D-USによる乳癌の腫瘍体積測定は臨床的に有用であり,今後は術前化学療法の効果判定法として有用となる可能性がある.

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© 2016 一般社団法人日本超音波検査学会
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