超音波装置の深部描出能力や分解能の向上などにより,腹部超音波検査においても消化管病変を発見する機会が増加している.今回我々は,上行結腸に発生した神経鞘腫の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
症例は50歳代男性.健診にて施行した腹部CT検査において上行結腸に35 mm大の腫瘍性病変を指摘され腹部超音波検査を行った.上行結腸から外側へ突出するように31×28×24 mm大の境界明瞭で内部均質な低エコー腫瘤を認めた.腫瘤は側方陰影を有していた.カラードプラ法にて腫瘤内部には血流シグナルを認めた.また,周囲に明らかなリンパ節腫大は認めなかった.FDG-PET検査にて同部位に中等度のFDG集積を伴い悪性も否定できないため,腹腔鏡補助下に上行結腸部分切除術が行われた.病理組織学的所見からは神経鞘腫に特徴的な紡錘形細胞の密な柵状配列が観察され,免疫染色において神経原性を示唆するS-100蛋白がびまん性に陽性を呈したことより,上行結腸神経鞘腫と診断された.
大腸に発生する神経鞘腫はまれであり,体外式消化管超音波検査の報告は少ない.密で均一な細胞増殖や被膜を有する腫瘤の特徴が,内部均質な類円形低エコー腫瘤や側方陰影として今回の超音波像に反映されていたと推察される.周囲組織も含めた詳細な観察は,治療時期の判断や術式選択において患者に有益となる.悪性病変だけでなく神経鞘腫のような良性病変も存在することを念頭に超音波検査を施行することが望まれる.