超音波検査技術
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症例報告
心臓転移したメルケル細胞癌の1例
岡崎 麻利藤田 圭二金本 優中山 弘美有安 早苗正木 修一宗政 充松原 広己
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2017 年 42 巻 6 号 p. 653-659

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抄録

症例は50歳代,女性.201X年左頸部腫瘤を自覚したが放置していた.翌年8月にオトガイ下にも腫瘤を形成し急速に増大し,同年10月リンパ節生検をしたところメルケル細胞癌(MCC)と診断された.翌月,耳下腫瘤切除術,遊離皮弁術,両頸部郭清術を施行.同月中旬より化学療法が施行され,その後は再発所見なく経過は良好であった.診断から1年後の1月右頸部郭清術施行し,この際の検査では悪性所見は認めなかった.2年後の4月,経過観察中の病院でのPET-CTにおいて心臓転移が疑われる所見を認め,精査目的で当院紹介となった.

来院時心電図は心拍数64/分の洞調律,胸部造影CTにおいて右房・左房の尾側に接する内部が不均一なmass像を認めた.心エコー図検査では,右房付近の心外膜に内部が不均一なmass様構造物を認めた.この構造物による血流障害はなく,心腔内にmass様構造物は認めなかった.心囊液は少量~中等量貯留していたが,心タンポナーデは認めなかった.

心臓腫瘍の摘出は右室壁の広範囲の切除が必要であるが腫瘍内を右冠動脈が通過しているため,完全な摘出は困難と判断され化学療法の方針となった.

MCCは悪性度の高い皮膚癌であるが,高齢者に多く50歳代での発症は稀である.また,MCCは血行性転移およびリンパ行性転移を生じ,様々な部位への転移が報告されているが心臓への転移は文献的にも少なく,非常に稀である.

今回我々は,心臓転移を生じたMCCの症例を経験したので報告する.

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© 2017 一般社団法人日本超音波検査学会
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