2024 年 49 巻 1 号 p. 21-27
今回,背部アプローチが胸部下行大動脈の観察に有用であった症例を経験したので報告する.症例は70代男性.間欠性跛行の精査の結果,血栓閉塞を伴う胸腹部大動脈瘤を指摘され当院受診となった.心臓超音波検査で胸部大動脈から腹部大動脈にかけて広範囲に拡大を認め,腹部大動脈は閉塞状態であった.胸部下行大動脈は,傍胸骨アプローチおよび心尖部アプローチでは明瞭な観察は困難であったが,心窩部アプローチで血管内腔に可動性構造物を認めた.背部アプローチを行い椎体左縁から描出したところ胸部大動脈が明瞭に描出され,血管内壁の潰瘍や可動性構造物を明瞭に観察することができた.その後,腹部大動脈瘤に対してステントグラフト内挿術が行われ,術後経過は良好で下肢症状も改善した.胸部下行大動脈は心臓背側を走行しており,経胸壁アプローチにおいて明瞭な描出が難しい.背部アプローチは,解剖学的条件により視野は限られるが,非侵襲的,非造影下でも血管の性状や胸部大動脈瘤・解離を評価することができ,有用な所見が得られる症例がある.