2025 年 50 巻 5 号 p. 493-504
目的:大動脈弁閉鎖不全症(Aortic Regurgitation: AR)の重症度評価で用いる下行大動脈Reverse flowが適応外となる動脈硬化の程度を明らかにすること.
対象と方法:心臓超音波検査と胸部CT(Computed Tomography)を同時期に受けた軽度以下のARで65歳以上の167人(平均年齢74±9歳)を解析対象とした.左室拡張能指標,上行大動脈のStiffness indexなどを計測し,下行大動脈のReverse flow陽性,陰性の2群で比較した.Reverse flowは胸骨上窩アプローチで拡張末期に18 cm/s以上の逆流を認めたものを陽性とした.
結果と考察:軽度以下のARの高齢者63人(38%)に平均20±2 cm/sのReverse flowを認めた.多変量解析ではStiffness index>11.8 (odds比=2.1, 95%CI=1.0–4.4, p=0.049),CTの大動脈石灰化所見(odds比=8.7, 95%CI=2.5–31, p<0.001)で偽陽性Reverse flow出現の予測能が高かった.CT未施行例ではStiffness indexが参考になると考える.
結論:胸部CTで大動脈石灰化所見,上行大動脈のStiffness index上昇がある症例は下行大動脈のReverse flowが偽陽性となる可能性が高いためAR重症度評価の際に注意が必要である.