論文ID: 308
目的:全身状態が良好である小児の特発性腸重積症に対する治療は,まず非観血的高圧注腸整復治療で整復が試みられ,整復困難な際は開腹手術が施行される.我々は整復困難となることが予測される超音波所見を検討することを目的に,当院で経験した症例の超音波画像を後方視的に再評価した.
対象と方法:2003年2月から2018年4月に腸重積症と診断され,治療前に超音波検査を施行していた51例を対象とした.高圧浣腸の整復が成功した群と手術群に分類し,患者背景と,超音波所見は腸重積の先進部,外筒径,内筒進入脚径,内筒腸間膜径,外筒径と内筒進入脚径の差と比,外筒径と内筒腸間膜径の差と比,内筒腸間膜径と内筒進入脚径の差と比,液体貯留の有無について有意差検討を行った.
結果と考察:有意差を認めた項目は,腸重積部の液体貯留の有無のみであった.嵌入腸管の浮腫性肥厚は内筒の嵌入強度を反映する所見と考えたため,内筒腸管に関連する因子を評価したが,有意な結果は得られなかった.腸管浮腫の所見は液体の漏出よりも軽度の血流障害の時期でも出現するため,血流障害の程度としては,より弱い所見を反映したものと考えられた.内筒の腸間膜径は有意ではないが大きいほど整復困難な傾向を示した.
結論:内筒腸管径に関わる因子は高圧浣腸の失敗率に寄与しなかった.腸重積部の液体貯留は,他の因子よりも嵌入強度に関連する血流障害の強度を反映したものと考えられた.