2022 年 38 巻 2 号 p. 50-59
直腸癌に対する括約筋温存術(SPO)の低位吻合では、術後に頻便・便失禁、分割便、便意切迫などの排便障害としての低位前方切除後症候群(LARS)をきたす。その発生頻度は80-90%で、生活の質(Quality of life:QOL)に影響を与える重症LARSにおいては約40%と高い。中には術後10年以上経過した患者にも認められたとする報告もあり、長期にわたって患者のQOLに影響を与えている。重症LARSの危険因子には、術前化学放射線療法、直腸間膜全切除、縫合不全、一時的ストーマ、吻合部の高さがある。LARSの治療には食事指導、薬物療法、骨盤底筋訓練、バイオフィードバック療法、経肛門的洗腸療法、仙骨神経刺激療法があり、これらに効果が期待できない場合には最終的に永久的ストーマ造設が選択される。今後下部直腸癌に対するSPOがますます積極的に行われる中で、長期にわたって患者のQOLに直接影響を与え続けるLARSに対する対応は急務で、複数の医療者が協働して集学的に対応していくことが必要である。