日本ストーマ・排泄リハビリテーション学会誌
Online ISSN : 2434-3056
Print ISSN : 1882-0115
最新号
40巻2号(通巻111号)
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追悼
学会総会報告
学会賞報告
学会総会:会長賞・座長選出優秀演題賞
歴史に学ぶ:先達の回想録 第5回
歴史に学ぶ:先達の回想録 第6回
文献紹介
原著
  • 安藤 嘉子, 髙橋 新, 藤井 誠, 長谷川 寛, 木村 聡元, 山本 博之, 田嶋 哲也, 西口 幸雄, 掛地 吉弘, 宮田 浩章, 北川 ...
    2024 年 40 巻 2 号 p. 46-61
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/03
    ジャーナル フリー

    【背景・目的】日本では、ストーマ造設やストーマ閉鎖の実数は把握されていない。本研究の目的は、日本における消化管ストーマ造設・閉鎖の件数を把握するための調査を行うことである。

    【方法】対象は、National Clinical Databaseに登録された特定の消化器外科手術を受けた患者である。対象となる術式は、日本消化器外科学会の策定した「消化器外科専門医共通項目」を用いて2013年から2018年に登録された手術である。

    【結果】National Clinical Databaseによると、2013年1月1日から2018年12月31日までに、合計154,323件の消化管ストーマが造設された。術式別では、ストーマ造設術が78,723件、腹会陰式直腸切断術が39,653件、骨盤内臓全摘術が2,470件、ハルトマン手術が33,572件であった。ストーマ造設に対するストーマ閉鎖の比率は、70 歳未満の患者では年々増加していたが、それより高齢の患者では増加していなかった。概ね、結腸全摘術の35%、大腸全摘術の60%、低位前方切除術の20%がストーマ造設を伴っていた。調査期間中、直腸癌でストーマを造設した患者の数は徐々に増加し、ストーマを造設した患者の総数は高齢者ほど多くなっていた。

    【結論】日本における消化管ストーマ造設件数は徐々に増加し、高齢者の割合が年々増加している。ストーマ造設の目的や術式は多様であり、超高齢社会である日本では今後も増加することが予想される。

  • 野澤 宏彰, 佐々木 早苗, 林 千恵子, 河﨑 明子, 佐々木 和人, 室野 浩司, 江本 成伸, 石原 聡一郎
    2024 年 40 巻 2 号 p. 62-74
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/03
    ジャーナル フリー

    【目的】待機手術症例においてストーマサイトマーキングはストーマ関連合併症を減少させるのに重要であり、長期的な生活の質にも影響を及ぼす。しかし緊急手術においてストーマサイトマーキングの意義はわかっていない。本研究では、緊急手術における術前ストーマサイトマーキングがストーマ関連合併症を減少させるかどうかを検討した。

    【方法】前向きに登録したデータベースとカルテを参照することで2009~2022年に当院で緊急でストーマ造設術を受けた患者を、マーキング(+)群(194名)またはマーキング(-)群(151名)へ分類した。術前ストーマサイトマーキングの年次変遷と、マーキングが術後のストーマ関連合併症発生へ及ぼす影響を検討した。

    【結果】grade 2以上のストーマ関連合併症はマーキング(+)群で低率であった(24% vs 36%、p=0.010)。個別にはマーキング(+)群でストーマ部出血が少なく(2% vs 10%、p<0.001)、ストーマ周囲皮膚炎が低率であった(10% vs 18%、p=0.042)。術前ストーマサイトマーキングなしは、独立した術後ストーマ関連合併症のリスク因子であった(調整後オッズ比:1.69、p=0.034)。

    【結論】緊急手術での術前ストーマサイトマーキングは術後ストーマ関連合併症低減と関連した。今後前向きの研究でその有用性を検証すべきである。

  • 立花 由紀子, 白川 和義, 大重 まどか, 宮﨑 敬子
    2024 年 40 巻 2 号 p. 75-86
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/03
    ジャーナル フリー

    【目的】適切なストーマ装具選択のために2019年9月に導入したストーマ装具選択フローチャート(以下、フローチャート)とストーマ術後セット(以下、術後セット)が、早期かつ適切な装具選択に及ぼす効果を検証する。

    【方法】2018年9月から2020年9月に消化管ストーマ造設を受けた患者を対象にフローチャートと術後セットの導入前群と導入後群に分けて、手術から装具決定までの日数、装具決定までの装具交換回数、初回ストーマ外来での装具変更率を比較検討した。

    【結果】解析対象は176名、平均年齢64.2±13.8歳、男性101名(57%)で、導入前群91名、導入後群85名であった。手術から装具決定までの日数は、導入前後で平均18.3日から13.1日に有意に短縮した(p<0.001)。装具決定までの装具交換回数も、導入前後で平均8.5回から5.8回に有意に減少した(p<0.001)。初回ストーマ外来での装具変更率も導入前後で51%から17%に有意に減少した(p=0.0001)。

    【結論】フローチャートと術後セットは、術後早期の適切な装具決定に有効であることが示唆された。

  • 柴﨑 光彦, 前馬 理恵
    2024 年 40 巻 2 号 p. 87-102
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/03
    ジャーナル フリー

    【目的】在宅で生活するストーマ保有者における生活の質(以下、QOL)とストーマ管理困難や日常生活での問題に対する対処意欲・ヘルスリテラシーとの関連を検討する。

    【方法】大阪と兵庫のオストミー協会の全会員555名に質問紙調査を郵送法で行った。QOLは短縮版オストメイトQOL調査票で、対処意欲は0~10点の11段階で、ヘルスリテラシーはHLS-14で評価した。QOLと対処意欲・ヘルスリテラシーとの関連は、強制投入による重回帰分析で検討した。

    【結果】回答が得られた205名中、「対処意欲」の回答項目に欠損値のない103名(平均年齢73.1歳、男性50名)を解析対象とした(有効回答率18.6%)。重回帰分析では、対処意欲と機能的ヘルスリテラシーが高いほどQOLが有意に良好であったが、伝達的および批判的ヘルスリテラシーは有意な関連を認めなかった。

    【結論】ストーマ管理困難や日常生活上の問題に対する対処意欲と機能的ヘルスリテラシーの向上を支援することで、ストーマ保有者のQOLが高まる可能性が示唆された。

総説
  • 田中 俊明
    2024 年 40 巻 2 号 p. 103-117
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/03
    ジャーナル フリー

    膀胱癌における標準根治治療である膀胱全摘除術は、侵襲が大きいことに加え、尿路変向術を要するため、術後の生活様式に大きな変化をもたらす。手術侵襲の軽減を目指し、ロボット支援腹腔鏡下膀胱全摘除術が普及しているが、小さい術創と術中出血量減少は明らかなメリットであるものの、開放(開腹)手術と比較した優位性は明らかではない。尿路変向術式は、QOL向上を目指して種々の術式が開発されてきたが、管理が容易で合併症の少ない術式が選択されている。結果、現在でも回腸導管が標準術式であり、適応症例に対しては回腸新膀胱も選択される。尿路変向術には各術式特有の合併症があり、早期のみならず晩期においても、これらを念頭に入れて管理する必要がある。また、多職種チームによる術前の十分な情報提供と相談および術後の継続した支援は、患者のQOL改善につながり、治療に対する満足を得るために重要である。

研究報告
  • 羽根田 祥, 高橋 賢一, 斉藤 真澄, 田村 敏也, 菊地 湖
    2024 年 40 巻 2 号 p. 118-123
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/06/03
    ジャーナル フリー

    【目的】小腸ストーマ造設症例における傍ストーマヘルニア(parastomal hernia、以下PSH)の発生率とリスク因子を検討する。

    【方法】2015~2018年に当院で小腸ストーマを造設した症例について、腹部CT検査所見と臨床症状に基づいてPSH発生率を算出した。また、臨床情報および術前腹部CT検査で測定したPSH発症のリスク因子としては、臨床情報に加えて術前の腹部CT検査で測定した腹直筋厚、腹直筋幅、皮下脂肪厚に関して、PSH発生の有無で分けた2群間で比較することでPSH発生リスク因子を検討した。

    【結果】解析対象は162例(男性112例、女性50例)で、年齢中央値61歳(範囲:18-88)、経過観察期間中央値192日(57-1,657)であった。PSHは12例(7.4%)に発生し、PSH累積発生率は0.5年で6.8%、1年で10.5%、2年で14.5%であった。PSH発生リスク因子は、高齢(p=0.045)、大腸癌(p=0.04)、高BMI(p=0.001)、厚い皮下脂肪厚(p=0.004)であった。

    【結語】高齢、大腸癌、高BMI、皮下脂肪厚が厚い症例は、PSH発生リスクが高いことを念頭に診療に当たるべきと思われた。本研究は後方視的な単変量解析であるが、今後、大規模な前向きかつ多変量解析が必要である。

地方会抄録(地域研究会記録)
編集後記
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