抄録
本研究は、童謡に登場することばを対象として、日本の原風景の構造を明らかにすることを目的とした。「日本童謡集(与田凖一編・1957(昭和32)年)」に集録されている童謡に登場する自然や動植物、景観を構成することばを抽出したところ、出現回数の高い要素は、山や月、空などといったように、いずれも、どこからでも目にすることのできる比較的スケールの大きな自然的景観要素であった。次いで、草花などの身の回りの自然的景観要素であった。また、数量化_III_類、クラスター解析によりマッピングを行った結果、童謡に示された原風景の構造は、以下の要素およびグループから成立していることが明らかとなった。(1)単独での出現が意味を持つ要素:_丸1_空、_丸2_太陽、_丸3_月、_丸4_星、(2)グループを形成した要素(偏在的に分布):_丸1_山と植物、木や果実、_丸2_海辺、_丸3_田んぼと生き物、_丸4_暮時のお寺周辺。原風景とは、空間的な要素のみならず、そこに生起するさまざまな事象や棲息する生物に対し、人が積極的にかかわることで形成されるものであることが示唆された。「かかわり」のある空間づくりこそが、地域・国に対するアイデンティティを育み、総じて、「自然との共生」の生活を可能にしていくといえる。