抄録
我々の生活する空間には、様々な図像的イメージが存在している。本研究は、環境を彩る様々なグラフィカルな仕事を「環境グラフィック」の名称で呼び、その概念的考察を試みたものである。まず、「環境グラフィック」の概念の定義からはじめ、次に形式や目的、効果や展開の状況などを、様々な観点から整理を行った。その結果、「環境グラフィック」は人間の存在基盤に直結し、具体的なスケールと物理的条件をもつ外的世界としての「環境」」に対し、2次元的なグラフィックを通じて視覚的に働きかけるものであることがわかった。それは被膜であることが多く、失敗したら描き直せる気楽さを持ちながら、その効果は人間の精神的側面にまで及んでいた。「環境グラフィック」はしばしば非日常的な視覚経験を我々に与えて、新たな環境の形成、あるいは変貌を促していたのである。その起源は先史時代の洞窟画に通じているほど、長い歴史を持っていた。しかし、その名称が登場したのは20世紀後半で、その背景には環境問題に対するデザインの積極的な参与が指摘できる。このように、「環境グラフィック」は時代の情況を反映しながら、人間と共に展開されてきたことがわかった。