現在のオフィスワークでは、人は場と状況に応じて様々なドキュメント媒体を使い分けたり、並行して同時に使用したりしている。しかし、異なるドキュメント媒体をハンドリングする作法には依然として不便な面が残っている。また近い将来、電子ペーパーやIDタグ付きの紙など新しいドキュメント媒体の普及が予想され、人が扱うドキュメントツールはさらに多様化する可能性がある。このような状況から、今後より知的生産性の高いのワークスペースを実現するためには、人が様々な形態のドキュメントをより柔軟に不自由なくハンドリングできる環境が求められると考えられる。
以上のような新しい状況に対応した環境をデザインするには、従来そして未来のドキュメントワークに対する深い洞察が不可欠であるが、ドキュメントワークにまつわる行為は無意識にとられていることも多く、単に顕在化した課題を解決しようとするアプローチでは不十分である。本稿ではこのような認識のもと、ドキュメントワークの本質性を観察とプロトタイピングを通じて体験的に考察しながら将来のワーク環境を検討するデザインプロセスについて説明する。