抄録
植物ならびに動物をモチーフとした古建築の文様を、CADを用いて対数螺旋とその変形に分解し、それらの組み合わせによる複合体としての表記を試みた。特に日本の古建築を対象とした分析は前例がなく、多くの装飾文様の輪郭を対数螺旋の組み合わせによって近似させ、そこに確実な再現性が確認された。
日本の伝統的建築意匠において経験的に応用されてきた対数螺旋というデザイン要素が、過去から現在を通じて、建築・空間デザインにおいて継承されてきた重要な形態要素であり、さらに、直線的でありしかも曲線的でもあるという、相反する性質を併せ持つがゆえに数多くの基本図形を生成することができる点に着目し、それ自体を分解・再構成した図像における「美」を提示することにより、制作者の意思を確実に伝える役割を果たすものであることを明らかにした。また、フラクタルの特徴である自己相似形を繰り返し使用することにより、部分から全体にわたって通底するひとつの形態の訴求力を高め、確実に第三者の意識を喚起するデザイン要素としての、基礎的な幾何学形態の重要な役割を確認した。