抄録
現在、室内で使われている自走用車いすは、車いすユーザーの日常生活における主要な移動手段であるとともに、様々な生活行為に対応する道具である。したがって、自走用車いすの使い勝手は、車いすユーザーの生活形態や生活の質に大きく影響を及ぼす。特に室内で使う車いすには、住生活に応じた機能を丁寧に満たすことが常に求められる。
例えば、韓国や日本の住宅のように靴を脱いで生活する空間において、現在の室内・室外の区別がない自走用車いすでは衛生上の問題が生じている。これは、靴を脱いで生活する文化圏での車いすユーザーにとって共通の問題と言ってよいだろう。車いすユーザーの生活現場から求められる自走用車いすの機能的条件をとらえ直すことや、それらを内包した車いすの開発はユーザーの室内空間における生活動作の可能性を拡大したり、生活の質を高めることにつながるであろう。
本研究は車いすユーザーの生活形態や生活文化的側面から室内空間における車いすの問題点を把握し、車いすに求められる機能や生活道具としての概念について考察することを目的としている。