日本デザイン学会研究発表大会概要集
日本デザイン学会 第59回研究発表大会
セッションID: 10-05
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「クラクフ工房」にみるポーランドの近代デザイン運動
ナショナリズム意識と汎ヨーロッパ的デザイン思想の表象
角山 朋子
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抄録

本研究の目的は、ポーランドの「クラクフ工房」(1913-1926)を中心に、20世紀初頭のクラクフ近代デザイン運動の特徴とその意義を明らかにし、中欧デザイン史の一端を解明することである。
クラクフ工房は、帝都ウィーンの「ウィーン工房」(1903-1932)と類似の芸術家と職人の協同組合であり、工芸向上を目的に木工、金属加工品、民族調のテキスタイル製品、玩具等を制作した。分割下ポーランドの精神的首都であったクラクフでは、世紀転換期の近代都市化と共に愛国主義的な応用芸術運動が興り、クラクフ工房設立はその延長上にあったが、メンバーはナショナリズムより汎ヨーロッパ的デザイン動向に連動していた。1910年代の都市の発展と多様化する西欧デザイン思想の影響下、デザイナーはロマン主義的工芸改革よりむしろ産業デザイン運動に共鳴し、現実にはそれらはアーツ・アンド・クラフツのレベルに留まったが、市立産業技術博物館と共同で生産的な工芸活動を試みた。
愛国的表現と西欧デザイン思想が共存した20世紀初頭のクラクフ近代デザイン運動より、西欧から中欧への近代デザイン運動の拡大・浸透過程が浮き彫りとなる。

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© 2012 日本デザイン学会
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