抄録
食品の安全性に関するネガティブなニュースをテレビや新聞などで見ることによって消費者たちは不安感を感じることになる.このような消費者の不安感を軽減させるためには,生産者,専門家,消費者との食品安全に対する共通理解を促すツールが必要である.本研究では,農薬の残留量に関わる無毒性量(NOAEL),一日許容摂取量(ADI),残留農薬基準の関係を示す表示方法(①文章,②文章+グラフ,③文章+イラスト)が残留農薬に関するリスクの認識に及ぼす影響について検討した.実験は,参加者に3段階の残留農薬基準値以下の農薬が残留している可能性がある農産物について,安全の程度に関する認識をVAS(ビジュアルアナログスケール) を用いて評価させた.その結果,表示方法によってリスク認知強度の順位の正答率は「文章+イラスト」の方が「文章+グラフ」より有意に高かった.一方で「文章+グラフ」は「文章」よりも正答率が低かった.この結果からは,3つの基準値の量的な関係と生体への影響を表した2次元のグラフを用いた「文章+グラフ」より,1次元で表した「文章+イラスト」の方がリスク強度を適切に伝達することができる可能性が示唆された.