抄録
民芸運動は1926年に柳宗悦によってはじめられ、近代以前の工芸品の普及とその美的価値を啓蒙することを目的とした運動である。しかし、近代化する時代のなかであえて過去の手仕事に光を当てるものだったため多くの課題に直面した。民芸運動に参加した池田三四郎は長野県松本市に松本民芸家具を設立し、そこに職人を集めて民芸を生産した。池田にとって民芸論の実践は単に過去の民芸を模倣することではなく、現代に合ったかたちで手仕事を実践することだったという点だ。したがって、近代以前の工人の創意に近づくばかりではない。本研究は池田が如何にして現代に活きる民芸を模索したのか明らかにする。そのために彼の取り組みを二つの方向から考える。一つ目は池田が過去の民芸をどのように見ていたのか、二つ目はそれと新作民芸はどのように関係しているのかである。これにより、池田の民芸に対する見方とその応用の仕方を理解する。さらに本研究ではそれらが当時のモダニズムとどのような関係にあるのかについても考える。