抄録
製品を購入する際,視覚による事前の期待と事後の経験との差異が製品に対する満足に影響を及ぼすことが知られている.またその時,製品に対する視覚的な期待の要因として,照明状態などの環境的要因の影響が挙げられる. 現状の照明設計において,視覚的期待を向上させる試みは存在するが,生起時における要因の解明および,認知的な構造についての研究は行われていない. そこで本研究では,食品に対する視覚的期待生起時における諸要因の関係を4階層モデルでの説明を試みた. 食品に対する「おいしそう」という視覚的期待の認知要因として,鮮度や温冷感および記憶色などを仮定した.記憶色とは我々が見慣れた物体に対して思い起こす色のことであり,普段の視覚的経験に基づいていると考えられている.また照明状態として色温度と照度の条件に標準光を付加した21条件,および6種類の食品に対して感性実験を行った. 実験の結果より,仮説モデルを用いて食品ごとの視覚的期待生起時における要因構造をおよび諸要因の関係を明らかにした.また標準光よりもおいしそうと感じる照明状態を発見し,記憶色への類似度が視覚的期待の主要因であると結論づけた.