抄録
今日、内モンゴルでは遊牧生活や季節移動の生活をしている地域は極めて少なくなり、ほとんどの地域では定住して牧畜生活をしている。更に、近年の環境問題に対応する政策や、生活環境の改善のため、遊牧は廃止され、定住して牧畜する人も次第に少なくなり、町や都市への移住者がますます増加している。このような生活様式、及び、人口学的変化が続く今日、モンゴル人のアイデンティティをどのように継承していくかが重要な課題である。本研究は、牧畜生活を営む定住民と地域外への移住者によって毎年欠かさず祭祀されているアルバラグガチャーのオボー祭祀に着目し、オボー祭祀を生活、社会、概念的側面から考察した結果オボー祭祀には遊牧生活文化が活かされていることを確認できた。また、当地では、定住民は移住者より強い遊牧アイデンティティを持っており、オボー祭祀に参加する移住者が故郷へ強い「郷愁感」を抱いていることを明らかにした。これらを基づいて、定住民と移住者の両者が共通のアイデンティティを持ち、モンゴル民族としてのアイデンティティを高めるこれからの生活づくりの方向性を導出した。