近年,大量生産・大量消費型社会における環境問題や資源消費によるエネルギー資源問題,また,精神的な豊かさの欠乏が問題となっている.人工物デザインにおいて,このような問題を打開する新たなコンセプトとして,デザインの理論や方法論に時間軸の概念を導入したタイムアクシス・デザインが挙げられる.また,同デザインを具現化するデザインの方法論の一つとして,時間と共に人工物の価値が成長する価値成長デザインが提案されている.しかし,価値成長デザインを人工物デザインに応用する指針は明確ではない.本研究では,価値成長デザインを人工物デザインに応用する指針の構築に向けて,価値が成長する既存の事例を基に,人工物の要素間の関係を分析した.その結果,価値が成長する9の主要因が抽出され,価値成長デザインにおける指針構築のための知見が得られた.