抄録
社会的な価値構造が大きく変化しつつある昨今、競争優位の源泉となる強固なブランドを構築し、顧客の持つブランド・ロイヤルティを維持・向上しながら新製品の開発に活かすことが、企業の経営課題の一つとされている。中でも、高いブランド・ロイヤルティを持つ既存顧客達は、ブランドに対し強い愛顧を持っており、それらの顧客愛顧を理解せずに大幅な製品のモデルチェンジを行うと、強烈な批判者となる可能性を持つ為、これらの顧客の影響力に留意しながら製品戦略を構築する必要がある。以上の背景から、本研究では探索的研究として顧客をDick&Basu(1994)の顧客グリッドに従い4つのセグメントに分類した後、ブランド・アイデンティフィケーションを媒介要因とし、デザイン変更におけるデザイン評価とブランド・ロイヤルティの関係に関する各種分析を実施することで、各セグメントのブランド・ロイヤルティの維持・向上に関わるデザイン評価要素を抽出した。また、これらの分析結果を元にデザイン変更後のサンプルを作成し、定量的調査を行うことで、結果の妥当性についての検討も実施し、新たな製品デザイン戦略の構築に役立つ知識の獲得を試みた。