日本デザイン学会研究発表大会概要集
日本デザイン学会 第63回研究発表大会
セッションID: PD-09
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インドネシア・バリ島・テンガナン村における伝統的織物 「グリンシン」の文化的特質
制作・形態・使用に関する調査に基づいて
ウタミ リラアニンディタウィヤンチョコ デゥディ植田 憲
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抄録

テンガナン村のコミュニティにて生産され、継承されるグリンシンの文化的特質、とりわけ、その制作過程、使用法、そして形態について、現地での調査に基づき再確認を行った。その結果以下の知見を得た。(1)織物は神に近づく媒体とされ、供物や儀式といった宗教的行事のために制作、使用されており、当該地域の人びとは、グリンシンを使用した儀式的活動を通して、神との関係性を認識し、その実現を目指している。(2)織物制作の過程において、人びとは日常の社会的活動と母娘のつながりを通して織物の文化を伝え、人と人とが相互に作用する関係性を実現させている。しかし、(3)今日においては多くの人びとが拡大する貨幣経済の中で、ものづくりを通して形成されてきた村落のアイデンティティおよびを失いかけている。そのため、(4)織物制作と象徴的文様において表現された精神的価値から、伝統のアイデンティティと共同体の目的を再発見する必要がある。

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© 2016 日本デザイン学会
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