抄録
本研究は武志伊八と後藤義光の彫刻作品の形態を造形工学の視点から説明し、伊八を代表する「波の造形」と義光を代表する「龍の造形」の形態特徴を解析し、彫刻師の基本的な造形傾向を解読した。まずは彫刻の表面における曲率変化の分布状況により、特徴曲線を作成し、特徴形態を抽出した。そして彫刻の形態から伊八の波の形態に潜む「仮想的な円」と義光の龍の形態に潜む「仮想的な球体」を測出し、波に対する「2.5次元の平面積層の造形手法」と龍に対する「3次元の量塊の中心を巡る造形手法」を提出した。次は木彫の曲面を構成するポリゴン群の法線ベクトルを座標値によって単位球体に写像し、k-means法によって法線ベクトルを分解し、伊八と義光の形態について、法線ベクトルの方向の集中状況と分布状況の特徴と差異を解析し、平面積層と量塊中心の造形手法を検証した。最後には彫刻美術の視点から伊八と義光の造形傾向を影響した可能性がある奈良時代から藤原時代への日本彫刻の変容について検討した。