抄録
筆者らは,これまでの制作実践と研究活動から,学術的な内容の視覚化(アカデミック・ビジュアリゼーション)を制作者と研究者の共同制作として実施することが望ましいと考えている.なぜなら,アカデミック・ビジュアリゼーションのデザインプロセスでは,初期の工程において制作物の仕様が決定していないことが多く,制作者と研究者の対話によって,利用場面や必要とする機能などを明らかにすることが,制作物の完成度を高めるうえで重要な工程となるためである.つまり,アカデミック・ビジュアリゼーションの制作者には,研究者(ユーザー)の潜在的な要求を対話的に引き出して共通認識とし,制作に反映するファシリテーションスキルが必要であるといえる.しかし,デザインプロセスにおいて,制作者が研究者にどのような働きかけをしているか,具体的に明らかになっていない.本研究では,物理学及び技術史に関する映像制作過程を事例に,研究者と制作者の対話内容を当事者視点で分析考察し,制作者のスキルを明確にすることを目的とする.本考察では,制作者は,研究者自身が仕様を選択するための考え方を特に伝達していることが明らかになった.