抄録
“minamo chair”は、水に身体を浮かべる時の解放感と、初めて海に入る時に感じる未知への期待感と少しの不安を透明感のある座面と椅子全体の複雑な揺れによって表現したイージーチェアである。水の質感の再現ではなく、水に身体を浮かべる感覚・水に入った瞬間の感覚の再現を目標とした。また、徐々に水中の感覚に身体が慣れるように、この椅子においても座った瞬間の不安定感から、徐々に自分なりにバランスを取り慣れていくプロセスを意図している。これらの感覚がどのような挙動によってもたらされるのか調査し、身体を完全に包み込まない浅い座面と上下左右の複雑な揺れが重要であると考えた。これらを実現するため、伸縮性に富むシリコンゴムチューブによる座面と、カンティレバー構造のステンレス脚部により構成し、1)カンティレバー構造により生じる継続した上下方向の大きな揺れ 2)シリコンゴムチューブの張り方の粗密、強弱により生じる上下左右の揺れ 3)水中での脱力姿勢を模した座面角度、の3点によって水に浮かぶ感覚の再現を試みた。また、上下方向に十分な揺れを確保しながら、転倒やたわみにより座面が地面に着くことがないよう、応力解析により材料を選定した。