抄録
1980年前後まで、日本のトイレは5Kだと言われてきた。5Kとは、「汚い・臭い・壊れている・怖い・混んでいる」である。その後、女性の社会進出を背景に多くの施設が、より魅力的になるようにトイレを改修し、今となっては商業施設や駅舎内における公共トイレに清潔感があることやデザイン性が良いことは当たり前となっている。一方で、「混んでいる」状況は未だ改善されないままである。トイレの質が良くなればなるほど一人当たりの個室滞在時間が延びていることで、むしろ「混んでいる」状況は悪化している。このような背景を受け、本研究では主に駅舎内や商業施設にある「混んでいる」女性トイレを対象に調査を行い、改善案を提案した。混雑原因を検討するべく調査は3つ行った。1つ目に幅広い年代の利用者へのパーソナルインタビュー形式の調査を行った。結果として「毎回余計な行動をとるが、人が待っていることがわかるとその行動を控える」「個室内でコートを脱ぐ・荷物を置くなどは潔癖の利用者ではなく中間の一般層がとる行動である」などが明らかになった。2つ目にSD尺度6段階評価アンケート調査から、「満足度の高い」「混雑しにくい」トイレ空間の要素として「清潔感」「充実感」が必須であり、「利便性」が重要であることが示唆された。「審美性」に関しては、満足度は高くなるが混雑しやすい空間であることもわかった。3つ目に補足的な量的調査としてWebアンケートを行い、多くの利用者がとっている行動のうち混雑原因となっている行動は何かを分析した。これら3つの調査結果から女性公共トイレはなぜ混雑するのか原因を明らかにした上で、それを改善するプロダクト、サービス、空間構成の計6つの提案を行った。