否定情報は、我々の思考やコミュニケーションにおいて重要な役割を果たす。自然言語における否定は、重要な研究対象として捉えられ、論理学や哲学や言語学などにおいて継続的に研究が行われてきた。しかし、否定情報と視覚的表現・視覚的コミュニケーションは、一般に相性が良くないと捉えられることが多い。こうした否定の情報可視化の見方に反して、本研究は、現実世界の情報デザインにおいて、否定情報がどのように視覚的に表現されているのかを分析する。とくに写真、動画、マンガの三種類の視覚表現に焦点を当て、否定描写の多様なデザインについて考察を行う。写真は、一枚単位のものであり、背景知識や文脈の助けを借りて否定情報を表すことができる。さらに、背景知識や文脈は、画像を時系列順に複数枚提示する動画の形式において自然に伝えることができる。またさらに解釈を明確にするために、デフォルトの画像に対して人工デバイスを付け加えて、拡張画像あるいはマンガの様式にすることで、選択的に否定情報を表すことができる。現実世界データの収集と意味論的分析を通して、情報視覚化のデザイン原理の構築を目指す。