COVID-19の世界的な感染拡大によって社会のあり方は大きく変容した。
2020年4月の緊急事態宣言発令以降,大学等の教育機関においても学生や教職員の構内への立ち入り禁止や対面授業の停止,遠隔授業の実施など,授業方法の転換が余儀なくされてきた。こうした状況は緊急事態宣言の解除以降,様々な感染対策や制限などを設けながら徐々に緩和されつつあるものの,令和2年度に実施された文部科学省による「大学等における後期等の授業の実施状況に関する調査」の結果によると,当該調査に回答した377校(国公私立の4年生大学をはじめとする短期大学,専門職大学を含む)のうち,333校が現在でも授業全体の約半分以上を遠隔で実施している。また,多くの大学では遠隔授業の質を確保することが課題とされ,それぞれの大学でe-learningシステムの拡充をはじめ,学生の学修意欲や教育効果などを高める方法が検討されてきた。
とりわけ,大人数が履修する講義形式の遠隔授業では,対面授業と同様の臨場感や現場感,参加感などを再現することが学修意欲にもつながるとされ,一方通行型ではないインタラクティブな授業設計が求められるようになった。
このような状況において,本研究では,オンラインツールの活用や対面授業のような「臨場感」の再現を試みた授業内容を設計し試行した。そして,授業終了時に実施した,遠隔授業の実施内容に対するアンケートの結果から,オンラインツール等の使用や学修意欲に関する情報を抽出し,これらの情報を帰納的に分析した結果,「臨場感」の再現が学生の学習意欲や教育効果の向上に寄与することを明示した。