サウンドエデュケーションの目的に音を構造化して聞く能力の修得があるが,既存の教育プログラムでは実空間の音環境を聴取するため,1つの音の性質や音同士の関係性を理解することが難しい。この問題を解決するためには,様々な音を聞き分け,さらにそれらの音を自らが試行錯誤的に組み合わせて聴くことが効果的であると考え,音風景における「音の作成」が自由にできるアプリケーションを開発した。本研究では「音が与える音風景への影響」と 「音同士の類似・相違」の理解を目指し,開発したアプリケーションを用いた教育プログラムを被験者実験することで,その効果検証を行った。
実験結果から,被験者のほとんどが「単体の音が音風景に与える影響」について理解できた一方で,「音同士の類似や相違」については被験者の半分のみしか理解することができなかった。両方について理解できた被験者を分析すると,彼らは音風景を作成する際に「音素材に対してユニークなネーミング」を行っていることがわかった。このことから「音同士の類似や相違」に対する理解の差を埋めるためには,音素材から想起された感情や情景を音素材として名付けることが効果的である。