筆者ら(長岡造形大学北研究室)は新潟県長岡市与板町において、フィールドワークを通じて街の雰囲気を可視化する地図を多数制作するプロジェクト「ヨイタタンサケイカク」を進めている。本稿では、筆者らが制作した「与板そらカメラ」の制作過程や意図を論じる。
「そらカメラ」は、与板の建物や山並みなどのシルエットが切り抜かれた7枚のカードと、全体地図などが記された1枚のカードが、リングで綴じられている。使用者は与板の街を歩き、地図に示された地点に立ってカードを目の前に掲げると、その場所で見える風景がカードの形とぴったりと合い、穴の向こうには空が見える。筆者らは「空」というテーマ設定、モチーフの収集、プロトタイプの検証まで、フィールドワークを繰り返しながら進めてきた。
この過程の中で、以下のことが論点となった。①見上げて使う地図とする/②街と空の図と地の関係を反転させる/③形態の魅力を、想像の余地を残しながら伝える/④7枚が重なって与板の街の様相を表現する/⑤枠によって切り取る体験からカメラと呼称する。
今後は「そらカメラ」の使用による街歩き体験の変容を検証し、また多彩な地図を与板で販売していく予定である。