抄録
本研究では、十三代、十四代、十五代の酒井田柿右衛門が、それぞれ作家としての思考をどのように深化させ、伝統様式に取り組んできたかを明らかにすることを目的とした。分析対象として、十三代は「赤絵有情」および「私の履歴書:文化人9」、十四代は「余白の美」および「遺言:愛しき有田へ」、十五代は2017年から2022年にかけてのギャラリートーク15回分を用いた。 これらのテキストデータをKH Coder 3で処理し、頻出語の出現傾向、共起ネットワーク分析、クラスター分析を行った。 その結果、十三代は技法や家族に関連する語が多く、初代柿右衛門や柿右衛門様式への強い関心と、濁手の復興に尽力した姿勢が示された。 十四代は教育や技術継承に関する語が中心で、濁手の品質向上と職人の育成に注力し、未来への技術継承を重視していた。 十五代は自己の創作活動やデザインに関連する語が多く、自身の作風の確立と現代の課題への対応を通じて、時代に即した表現を追求していることが明らかとなった。 以上のことから、各代がそれぞれの時代背景や個人的関心に基づき、伝統の継承と革新に独自のアプローチで取り組んできたことが示された。