抄録
本研究では、盲児が「食べることの意味」を理解し、「食べる」が「体をつくる」ことにつながると実感できる療育ツールの開発を目的とする。特に、食べ物が口の中で咀嚼され、胃や腸を通過し、最終的に排泄されるまでの過程を触覚を通じて体験できる教材を提案し、食への関心を高めるとともに、食事の重要性を理解できるよう支援する。視覚情報に頼らずに身体の仕組みを学べる教材を提供することで、食に対する主体的な関心を促し、健康的な食習慣の形成にもつなげていく。本報では、既存の教材の調査結果をもとに、盲児に適した教材の要件を整理し、本ツールの対象年齢や必要な要素の選定、さらに試作プロセスについて報告する。調査の結果、現在の教材は消化器官の位置関係やサイズ感を学ぶものが中心であり、食物の流れや形状の変化を触覚的に体験できるものは少ないことが明らかになった。これを踏まえ、本研究では、実物に近いサイズと柔軟な質感を持つ「やわらかい人体模型」を試作し、体内での食物の変化を直感的に理解できる教材の開発を進める。今後は、試作した模型の評価を通じて改良を重ね、より効果的な教材の実現を目指す。