抄録
我が国で本格的な家具の工場生産が開始されたのは第二次大戦後であり、戦前の家具、特に和家具の製造は限定的な工作機械のみ使用する手工的製造が支配的だったと考えられる。しかしながら戦争によって物資統制が始まり、効率的な生産が求められた。その結果国内で製造販売される和洋家具も規格化されると同時に、公定価格が制定された。 諸外国においても戦時下には実用家具が開発されており、その実態について比較的研究も進んでいるが、我が国の同分野の調査は限定的であり,長年未着手の研究対象だった。 本報告は、戦時物価統制令により公布された「家具公定価格徴収」の基準を明らかにするために行われた桐箪笥の計測に関する報告である。調査は京都市伏見区にある宮崎木材工業京都工場において2024年8月1日、20日、9月13日の3回実施した。ここでは四尺三ツ重ね三方桐、三尺三ツ重ね総桐について主に採り上げ、そのデザインと技術的な特徴を示す。なお「『家具公定価格集』「桐箪笥長持類」規格表の摘要 戦時下日本の実用家具のデザインと技術の特質解明・桐箪笥編(1)(2)」と連続した内容である。