デザイン学研究
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和時計の文化史 : 時計のデザイン史(2)
早坂 功
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1990 年 1990 巻 78 号 p. 29-36

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抄録

本論は和時計の成立と発達に関わる各種史料に基づいて,時計と人間の関係を文化史的な視点から考察した。特にヨーロッパ製の機械時計が日本に伝来した経緯,時計師と呼ばれる時計職人の誕生とその製作の実態,和時計と密接な関係にあるからくりの内容と歴史などがその主要なテーマである。史料から得られた主な内容は次の通りである。(1)和時計の成立には,16世紀半ばのフランシスコ・ザビエルの来日と,その後のキリスト教布教活動に伴う戦国大名たちとの交流が大きな役割を果たした。(2)徳川時代初期に登場した時計師たちは,後に諸大名に召し抱えられ「お抱え時計師」として,安定した身分と報酬の下で和時計の発達に寄与した。(3)からくりに関する技術と人材も和時計の発達に欠かせない存在であった。特に細川頼直著「機巧図彙」は,その接点を明らかにしたことで大きな意義がある。上記のように,和時計の成立と発達には多くの人間が関わり,それぞれの立場で固有の文化史的役割を担った。

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© 1990 日本デザイン学会
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