1993 年 40 巻 3 号 p. 15-22
本論文は,形状の連続的変化に対する形状認識において重視される項目の抽出とその程度(主効果)を求めることにより実務上の示唆を得ようとするものである。調査にあたっては,その精度をあげるため直交配列表をもとにサンプルを作成し,要素の変化に対する主効果を求め,単位寸法と1σあたりの主効果で検討を行った。この結果,両者の主効果がともに高い部位は,形状変化の分散が大きく,その変化を特徴として認識している「変化が期待される部位」であることが判明した。これに対して,前者は大きいが後者が小さい部位は,ほとんどの乗用車で変化がない「変化が期待されない部位」であり,それが思いもよらず変化したため,変化量がわずかでも寸法あたりの効果が大きくなったものと考えられる。この部位は今後の展開の可能性が大きい。以上のことは,人間のもつ形状認識のための情報には,判定に効果のある形態要素だけでなく,変化の可能性,つまり形状の変化の分散の大きさを一般化した情報をあわせてもっていることを示唆している。