本研究では、知識社会とも称される今日において、デジタル・メディアにおけるデザインの役割について「情報」と「知識」をキーワードとして解明を試みた。デジタル・メディアにおける情報流通は膨大な量に及び、質および美的側面等のみの管理や評価は困難に等しい。このような状況において、デザインは従来の表現の経験則に加え、文字や言語表現に留まらない、五感を駆使した空間、時間、音響や映像等の、多様なメディアとしての創造へと進化し続けている。デジタル・メディアにおける情報とは、複製や加工が容易で、かつ不特定多数への配布やアクセスも可能である。これらは情報収集の利便性をもたらすと共に、情報そのものの価値を減衰させてもおり、知識社会としての概念や、「知識」の重要性の認識はここから生まれたとも言えよう。本研究では、日進月歩の様相を呈するデジタル・メディアの現状について考察を進め、知識社会における知識とは、自体に価値を有するものではなく、経験に基づいた新たな価値を創出を可能とするものを指すと定義した。また、デジタル・メディアにおいては、情報消費者とも呼ばれるユーザは無限とも思われる情報を常に取捨選択しており、これらに選択されるに相応しい価値の創出に参加する事が、デザイナーに求められている役割だとも言えよう。