デザイン学研究
Online ISSN : 2186-5221
Print ISSN : 0910-8173
ISSN-L : 0910-8173
『朝鮮裁縫全書』と楊甲兆にみる「針仕事:バヌジル」 : 韓国における「針仕事文化」に関する研究(3)
李 煕周植田 憲宮崎 清
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 53 巻 6 号 p. 65-74

詳細
抄録
本稿は、近代における韓国最初の裁縫専門書といわれる金淑堂著『朝鮮裁縫全書』(1925年)の記述を通して伝統的な「針仕事:バヌジル」の様相を明らかにするとともに、その著に触発されて「針仕事」を生涯の仕事として行ってきた楊甲兆氏への聞書き等に基づいて、韓国女性にとっての「針仕事」の意義を考察したものである。「針仕事」は韓国女性が習得しなければならない大切な徳目とされ、韓国の女性たちは、子どものころから母親や姉妹のなす「針仕事」に触れながら、技術の習得を行ってきた。彼女らは、家族が着用する在宅着や外出着、表着や下着のすべてを、手づくりしてきた。それらには、季節の巡りに対応した材料選択と形状構成がなされていた。加えて、女性たちは、決して端切れさえも無駄にしなかった。一針一針に心を込めて縫い合わされたチョガッポには、自ずと、女性たちの感性が美しく表現されている。男尊女卑の厳格な儒教倫理が生活の隅々にまで貫徹されていた時代のなかで、その生涯を「針」とともに生き抜いてきた女性たちは、「針仕事」を通して自己のアイデンティティを表出し続けてきた。『朝鮮裁縫全書』にはそのような韓国女性の「針仕事」の文化が反映している。
著者関連情報
© 2007 日本デザイン学会
前の記事
feedback
Top