2025 年 8 巻 1 号 p. 37-41
【背景】慢性腸間膜動脈閉塞症(CMI)は腹腔動脈(CA)、上腸間膜動脈(SMA)、下腸間膜動脈(IMA)の狭窄あるいは閉塞による慢性の腸管虚血によって起こる疾患である。今回外科研修中に脱水を契機に急性発症した腸管壊死に対し、腸管切除術と狭窄したSMAに対してInterventional Radiology(IVR)を施行した症例を経験したので報告する。【症例】74歳女性、温泉入浴中に腹痛を自覚し当院に救急搬送された。腹部造影CTにてCAとSMAの狭窄、回腸を中心とした小腸壁の造影不良と門脈ガスを認め、小腸壊死の診断で緊急開腹手術を行った。腹腔内を観察すると少量の血性の腹水と区域性に壊死した回腸を認めた。Indocyanine green(ICG)蛍光観察法による腸管血流評価を行い、小腸140cmを含め、回盲部切除を施行した。手術時間1時間38分、出血量は少量であった。術後5日より食事を開始し、第14病日に経過良好で退院した。しかし退院後から水様性の下痢が持続し、嘔吐も伴うため退院翌日に再入院となった。腹部造影CTでは前回切除腸管の肛門側の横行結腸に軽度な造影不良域を認めた。腹痛などの臨床症状に乏しく、脱水が主病態であったため、輸液にて保存的加療の方針とした。再度腸管切除を行う場合、短腸症候群の危険もあり、根本的治療として放射線治療科と循環器内科が合同で狭窄が強いSMAに対してIVRを施行した。IVR後12日目に下部消化管内視鏡検査施行し、粘膜色調と血流が良好であることを確認し、第35病日に退院した。現在まで症状再燃なく経過している。【考察】慢性腸間膜動脈閉塞症の血行再建法としてIVRと血管バイパス術があるが、本症例ではIVRを選択した。IVRは侵襲が少なく、外科的手術と比較して術後合併症が少ないという利点があるが、1年後の再狭窄率と症状再発率は17~50%と比較的高い。今後、注意して経過観察する必要があるため、循環器内科とフォローしていく方針である。