美的な刺激に対する評価はどのような過程を経て生じるのだろうか?われわれは,美的な評価的判断の心理構造をその評価と刺激との間に仲介する変数を仮定することによって解明することを試みている。本研究は,評価的判断のうちの特に快さおよび面白さに対する色彩感情尺度の仲介変数としての有効性を検討した。実験では,10名の大学院生に50の配色刺激の快さ,面白さ,明るさ感,暖かさ感,強さ感および複雑性評定を求めた。その結果得られた重回帰式は,面白さでは3変数(明るさ感,複雑性,および強さ感)で構成されたのに対して,快さに関しては1変数(明るさ感)のみであった。したがって,快さは面白さよりもより単純な構造を有する判断であること,また明るさ感は快さを強力に規定する変数であることが示された。