抄録
近年,OTC医薬品の利用が促進されているが,消費者は外箱記載情報をあまり読んでいないことが指摘されている。本研究では,このような消費者行動に対する文化的影響の有無について検討するため,日本人消費者とアメリカ人消費者のOTC医薬品選択時の視線を比較した。日本人・アメリカ人被験者は,3種類の日本製およびアメリカ製OTC医薬品外箱の中から最も購入したいと思った1品をそれぞれ選択した。課題遂行中,「製品名」,「成分」,「使用上の注意」などの10の外箱記載項目に対する視点の停留時間が計測された。その結果,日本人被験者は「製品名」,「キャッチコピー」を長時間注視し,アメリカ人被験者は「成分」を長時間注視していた。したがって,日本人被験者はアメリカ人被験者よりも「成分」等のリスク情報をあまり読んでいない傾向がみられた。以上の結果から日本人・アメリカ人被験者間で注視方法の違いがみられた背景には文化的な影響があり,OTC医薬品選択時の行動傾向にも現れていることが示唆された。