デザイン学研究
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63 巻 , 6 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • ―生活に密着した植物採集事例を通じて
    林 依蓉, 三橋 俊雄
    2017 年 63 巻 6 号 p. 6_1-6_10
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/05/10
    ジャーナル フリー
     本研究は,台湾原住民Taromak族における植物採集とその活用について,自然共生型の生き方や集落共同体のあり方を内包する「遊び仕事」として捉え,祭りや通過儀礼における精神文化的行動も含めて,食物,燃料,道具,薬,通過儀礼などの事例から,環境民俗学の視座からその特質を検討した。Taromak族の生き方には,市場経済的社会や近代技術に容易に触れられる生活環境にあっても,独自文化の「伝統的真正性」にこだわろうとする姿勢,「共同労働」「共同享楽」の思想に基づき自然と濃密に関わりながら助け合うゲマインシャフト的な社会が現存し,また,エスニック・アイデンティティを次世代に継承していこうとする民族の強い意志を見て取ることができた。さらに,Taromak族の「遊び仕事」には,市場経済と繋がる「労働」ではなく,自然と共生してきた生活文化・技術を継承し,暮らしや「生きる」ことそのものと本質的な関わりを持つ「使用価値を作り出す労働」が内包されていることを明らかにした。
  • ―デザインプロセスの導入と有効性―
    小高 有普, 清水 忠男, 村中 稔, 安島 諭, 桑村 佐和子, 大谷 正幸
    2017 年 63 巻 6 号 p. 6_11-6_18
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/05/10
    ジャーナル フリー
     高等専門学校(以下,高専とする)の主軸は長らく技術教育であったが,最近では,創造性喚起を基にした教育へのシフトの必要性が謳われている.創造性喚起は,美術系大学のデザイン教育の基盤である.両者にはカリキュラム編成や修業年数の違いがあるので,後者の内容をそのまま工業系高専に適用することはできないにしても,その考え方や手法を工業系高専の特性の中に活かせるのではないか.こうした観点から,創造性喚起を目的に試行されている工業系高専の課外授業におけるデザインプログラムと美術系大学デザイン専攻で実施されている教育プログラムについて照らし合わせ調査を行った結果,創造性喚起のための教育手法としては,「ユーザー参加型デザイン手法」が有効であることが示唆された.
  • ―空き地とランドマークの違いについて―
    西應 浩司, 入潮 裕子, 横山 広充, 宮岸 幸正
    2017 年 63 巻 6 号 p. 6_19-6_26
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/05/10
    ジャーナル フリー
     格子状街路における空間的サイン(空き地、ランドマーク)の効果の個人差を知るため、VRによる街路を使用した経路探査の実験と、スケッチマップを描画する調査を行った。被験者の属性は、方向感覚が優れている者と劣っている者である。その結果、属性によって空間的サインを利用する方略と、心的回転によって記憶にかかる負荷の軽減効果に属性差があることが分かった。また、2つの属性にとって、定位にはランドマークより空き地の方が有用なことが分かった。しかし、空間的サインは使用者によって効果が異なる可能性がある。今後、VR空間において空間的サインの種類と有効性を考えるためには、使用者の属性に関する調査が必要であることが分かった。
  • ―HMDとKinectを用いたシステムを大型プリンタの操作に適用する際の一考察
    内田 康之, 藤下 理美, 古市 昌一
    2017 年 63 巻 6 号 p. 6_27-6_36
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/05/10
    ジャーナル フリー
     本研究では,仮想現実,拡張現実,複合現実技術を基礎とし,教育効果等の向上のための体感型ARマニュアルを提案し,システム構築に必要な事項について実験により検討した。本システムを使うことで,実習生は実物を使った教育や訓練の活動を体験することができるが,その際に,実習生の動作を非接触型のモーションキャプチャであるKinectで認識し,装着しているHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を介して支援情報を得る。本研究では,実習生の動作を認識するために用いるKinectによる3つの動作判定方式を提案した。これらを楽器演奏のための教育プログラムに適用し,各々の特性を実験的に確認した。これら結果を受け,本システムを大型プリンタのロール紙取り付け作業に適用する方法を検討し,支援情報に基づく実験から,各工程での被験者の行動を観察し,使用性と課題を確認した。
  • 河瀬 絢子, 崔 庭瑞, 泉澤 恵, 日比野 治雄, 小山 慎一
    2017 年 63 巻 6 号 p. 6_37-6_46
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/05/10
    ジャーナル フリー
     近年,OTC医薬品の利用が促進されているが,消費者は外箱記載情報をあまり読んでいないことが指摘されている。本研究では,このような消費者行動に対する文化的影響の有無について検討するため,日本人消費者とアメリカ人消費者のOTC医薬品選択時の視線を比較した。日本人・アメリカ人被験者は,3種類の日本製およびアメリカ製OTC医薬品外箱の中から最も購入したいと思った1品をそれぞれ選択した。課題遂行中,「製品名」,「成分」,「使用上の注意」などの10の外箱記載項目に対する視点の停留時間が計測された。その結果,日本人被験者は「製品名」,「キャッチコピー」を長時間注視し,アメリカ人被験者は「成分」を長時間注視していた。したがって,日本人被験者はアメリカ人被験者よりも「成分」等のリスク情報をあまり読んでいない傾向がみられた。以上の結果から日本人・アメリカ人被験者間で注視方法の違いがみられた背景には文化的な影響があり,OTC医薬品選択時の行動傾向にも現れていることが示唆された。
  • 田中 佐代子, 小林 麻己人, 三輪 佳宏
    2017 年 63 巻 6 号 p. 6_47-6_56
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/05/10
    ジャーナル フリー
     国内の研究者・技術者によるグラフデザインの実態を明らかにし、ビジュアルデザインの質を高めるための基礎的要件を抽出した。そのためアンケート調査を実施し209件分の回答を得た。その結果、多くがMicrosoft Excelを使用し(85%)、主に棒グラフ(75%)・折れ線グラフ(74%)・散布図(66%)をデザインしていた。グラフの主な利用媒体は、スライド(86%)、論文等の文書類(83%)で、専門性の高いグラフデザインが求められていると考えられた。そしてほとんどの研究者・技術者がグラフデザイン技術の向上は有益だと思っていたが(94%)、自身のグラフデザインに満足していないものも少なくなかった(41%)。また研究者・技術者は、わかりやすさ、学術的な正確さ、センス良く美しさが保証された、グラフデザインを学ぶためのWebサイト(67%)やガイドブック(62%)を望んでいることがわかった。特に大学生・大学院生を対象に向上技術を示すと効果的であることもわかった。
  • 川上 比奈子
    2017 年 63 巻 6 号 p. 6_57-6_64
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/05/10
    ジャーナル フリー
     漆芸家、菅原精造はアイリーン・グレイに日本漆芸を教え、共同し、彼女の作品に影響を与えた。本稿の目的は、日本とフランスの菅原の遺族に取材し、関連文献・史料を調査してグレイが学んだ菅原の漆芸習得の背景を明らかにすることである。結果、次の事実が明らかになった。1)菅原の漆芸技術の習得は、圓山卯吉が創設し運営した山形県酒田市の教育機関兼事業所「カワセ屋」での修行に始まる。 2)「カワセ屋」が木工・家具製作に重点をおいていたことから、菅原は木工・家具製作の技術も習得していた。 3)菅原に漆芸を教えた師匠の一人は漆器職人、森川奇秀である。 4)菅原は、1901(明治34)年9月に東京美術学校漆工科に入学し、1905(明治38)年11月に渡仏した。同校に4年以上在学したが、卒業はしていない。 5)東京美術学校漆工科における主な教員は、彫刻家・高村光雲、漆芸家・川之辺一朝、漆芸家・辻村松華である。6)東京美術学校で菅原が学んだ内容に高村から学んだ彫刻の要素が含まれている。7)菅原は自身を漆芸家としてだけでなく彫刻家と自任していた。以上から、グレイは漆塗りの技術だけでなく、家具の製作や彫刻など立体造形の技術も菅原から学んだと考えられる。
  • 沈 得正, 飯塚 拓郎, 佐藤 浩一郎, 寺内 文雄, 久保 光徳
    2017 年 63 巻 6 号 p. 6_65-6_72
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2017/05/10
    ジャーナル フリー
     本稿は,竹材が有する魅力を色やテクスチャから生じる感性価値の観点から捉え直し,その活用可能性を述べている。具体的には,竹材が有する構造的な特徴に着目し,その主たる構成要素である表皮層,維管束,柔組織を染め分けることで,竹材の印象を変化させることを試みた。まずタケの各構成要素を染め分けるために,4種類の染料と3種類の染色方法を用いた染色実験を行った。その結果,染料と染色方法を組み合わせることで,竹材の表皮のみ,維管束のみ,表皮を除いた部分すべて,すべての構成要素を染め分けられることを確認できた。次に,染色された竹材の印象を明らかにするために,前述した染色竹材4種類に染色していないものを加えた計5種を対象として,被験者により抽出した印象評価語との対応関係を数量化理論Ⅲ類を用いて分析した。染色する構成要素により「明瞭さ・派手さ・人工感」の印象が大きく異なることが確認できた。以上より,染色竹材の活用可能性が示唆された。
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