2017 年 64 巻 2 号 p. 2_1-2_10
自動車の外観デザインは「カースタイリング」(以下CS)と呼称され、機能から導かれた合理的な形態だけでなく、格好良さや新しさなど、情緒的な魅力を表現する必要性が特徴となっている。本研究は、大量生産により自動車産業が誕生した20世紀初頭の米国に焦点をあて、当時の自動車広告のCSに関した表現を時系列に沿って調査を行い、断片的な既往の情報を関連付けることにより、CSの成立過程を明らかにすることを目的とした。そして広告表現の変化からCS成立の具体的な経緯が、1922 年以降のセダン型乗用車の急激な普及に伴い、顧客が自動車の外観に求める商品性の変化を背景に、同時期におけるゼネラルモーターズ社の商品戦略の策定と、ウィリス・オーバーランド・モーターズ社が他社に先行して設営したスタイリング・デビジョンをきっかけに、CSが成立していったという結論を導くに至った。