デザイン学研究
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64 巻 , 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • ―黎明期の米国自動車産業における情緒的デザイン表現に関する考察
    倉持 卓司
    2017 年 64 巻 2 号 p. 2_1-2_10
    発行日: 2017/09/30
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー

     自動車の外観デザインは「カースタイリング」(以下CS)と呼称され、機能から導かれた合理的な形態だけでなく、格好良さや新しさなど、情緒的な魅力を表現する必要性が特徴となっている。本研究は、大量生産により自動車産業が誕生した20世紀初頭の米国に焦点をあて、当時の自動車広告のCSに関した表現を時系列に沿って調査を行い、断片的な既往の情報を関連付けることにより、CSの成立過程を明らかにすることを目的とした。そして広告表現の変化からCS成立の具体的な経緯が、1922 年以降のセダン型乗用車の急激な普及に伴い、顧客が自動車の外観に求める商品性の変化を背景に、同時期におけるゼネラルモーターズ社の商品戦略の策定と、ウィリス・オーバーランド・モーターズ社が他社に先行して設営したスタイリング・デビジョンをきっかけに、CSが成立していったという結論を導くに至った。

  • ―ソーシャルデザインの視点から
    遠藤 雅子
    2017 年 64 巻 2 号 p. 2_11-2_20
    発行日: 2017/09/30
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー

     本稿は、ソーシャルデザインの視点から「授乳服」のデザインを取り上げ、それが登場した背景や、社会にいかに受容され、女性や女性を取り巻く人びとの意識・行動がどのように変化し、新たな生き方が生起し得ているかなどを検証したものである。
     労働力不足を背景に女性に対する期待は高まったものの、仕事と家庭の両立は今も大きな課題である。多様な女性の“生き方・働き方”を踏まえ、緩やかな就業継続、或いは中断再就職を希望する女性たちのライフコースに沿った支援は、家庭や社会における女性の位置づけに関する視点と無縁では語れない。今回は、「授乳服」の製作者および使用者へのインタビュー等を通して、「授乳服」の開発がもたらした女性の生活行動の変化について考察し、以下を明らかにした。
     ①授乳中の女性の行動を制約していたもの、②授乳服普及の経緯、③授乳服がもたらした生活様式の変化、④多様な視点からの製品開発が新たな生き方を創出する可能性。

  • 崔 晋海, 小野 健太, 渡邉 誠
    2017 年 64 巻 2 号 p. 2_21-2_28
    発行日: 2017/09/30
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー

     本研究の広義の目的は,戦略的デザインプロセスとは,について答えることである。しかし,まずデザインプロセスを語るためには,デザインプロセスを記述する必要があり,またその記述方法は,他のデザインプロセスと比較検討できるような記述方法でなくてはならない。
     そこで本研究は,デザインプロセス同士を比較・検討できる記述方法を模索し,その記述方法に従い,試行としてA社の実際に行われているプロダクトのデザインプロセスを記述し,分類した。
     そして実際に,A社の9つのデザインプロセスを記述し,工程数に着目することにより,4つのタイプ(デザイン先行型,ルーチン開発型,市場反映型,デザイン受注型)に分類し,またそれぞれの関係性を明らかにした。

  • -わかりやすさに関するデザイン指針と評価方法について-
    滝沢 正仁, 大島 創, 山本 浩司, 高橋 秀喜, 北 真吾
    2017 年 64 巻 2 号 p. 2_29-2_38
    発行日: 2017/09/30
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー

     高速道路の可変式道路情報板には,危険回避やルート選択に役立つ情報が表示される.近年,グローバル化や高齢化社会への対応策として,シンボル活用の機運が高まっているが,情報板シンボルには,わかりにくいものが存在する.また,媒体特性や環境特性を考慮したデザイン指針や評価手法も定められておらず,改良への手がかりが乏しい.そこで本稿では,情報板シンボルのわかりやすさに関する,「造形の基本的取決め」,「評価手法」,「改良の手がかりとなるデザイン指針」の導出を目的に検討した.まず,情報板の特性を道路標識や一般シンボルとの比較から整理し,取決めと評価手法を導いた.次に,提案した評価手法を用いて,取決めに基く代替案と現行シンボルの理解度調査を実施した.以上の結果から,取決めの妥当性を確認し,デザイン指針として,「車の造形を高評価のもので統一」,「熟知性の高い図材を用い,図材間の因果関係や,主体と客体を明確化」,「熟知性が低いまたは高速道路の文脈と関連付けが困難なシンボルは意味内容の見直しも検討」を導いた.

  • ―歩行から着座・扉開閉から歩行動作を対象とする
    伊藤 孝紀, 堀 涼太, 木暮 優斗, 西田 智裕
    2017 年 64 巻 2 号 p. 2_39-2_46
    発行日: 2017/09/30
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー

     本研究は、高齢者を対象に、補助具の有用性と、補助具で使用する素材の評価を把握することを目的とする。
     補助具の有無による動作の差異を把握することを目的とした補助具による有用性検証調査、既存の補助具で使われている素材と木材の視覚、触覚、形状における評価の差異を把握することを目的とした質感の印象評価調査をおこなった。 
     補助具の有用性検証調査から、扉開閉動作をみると,x 軸0mm,y軸977.5-1205mm の高さの縦部材を握る傾向がみられた。また、縦部材を握ることで, 重心変位が小さくなることがわかった。歩行から着座までの動作をみると,x 軸682.5-910mm,y 軸 750-990.5mm の補助具に触れる傾向がみられた。また、補助具を使うことによって, 体幹前傾角度が小さくなることがわかった。質感の印象評価調査から, 既存として使われている他素材よりも高く評価することが明らかになった。これより, 補助具の素材として木材を用いることが効果的であることがわかった。

  • 土屋 高康, 國領 二郎, 村井 純
    2017 年 64 巻 2 号 p. 2_47-2_54
    発行日: 2017/09/30
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー

     出産・育児分野では医療情報基盤の整備と合わせ,スマートフォンを活用した母子の自律的な健康管理と健康意識の改善が待望されている。自治体等ステークホルダーとも連携することで,サステナビリティを備えた有効な支援の確立を目指しているが,このような参加型医療が実現するためには,まず数多くの母子が主体的かつ持続的にスマートフォンアプリを利活用する必要がある。このようなユーザー側の自律性の課題に対しては,適正なインタラクション開発が鍵であるが,健康データや胎児の写真をインターネット環境で管理することに不安を抱くユーザーも多く,固有の事情を踏まえたインタラクション開発が重要である。そこで本稿では,母子手帳機能を有する2つのスマートフォンアプリの分析・評価を行い,ユーザーの自律性を喚起するデザイン要素の抽出を行った。結果,画像や音などを駆使した五感に訴求するデザイン要素の他、共有機能によりコミュニケーション価値を高めるプラットフォームデザイン要素が,ユーザーの自律性を高めている可能性として示唆された。

  • 伊豆 裕一, 加藤 健郎, 佐藤 浩一郎, 松岡 由幸
    2017 年 64 巻 2 号 p. 2_55-2_64
    発行日: 2017/09/30
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー

     多くのデザイナーはデザイン案の発想にスケッチを活用する.一方,デザインの造形教育において,対象物を観察し表現するデッサンが重視される.両者の目的は異なるものの,透視図法や陰影法など,使用される表現スキルには共通点も見られる.
     本研究は,デッサンとスケッチの描画スキルと描画過程を比較することにより,両者の関係について知見を得ることを目的とした.まず,10 名の対象者のデッサンとスケッチを描画スキルにより評価し分類した結果,対象者はデッサンスキル高,スケッチスキル高,およびその他の3つのグループに分けられた.つぎに,各グループのデッサンとスケッチの描画過程を分析し比較した結果,線や陰影と言った要素の描写時間や描画手順にグループによる違いが確認された.以上について分析した結果,デッサンとスケッチの描画には,表現スキルに加えて立体形状の認識方法の違いが影響することが示唆された.

  • 山本 裕子, 佐藤 弘喜
    2017 年 64 巻 2 号 p. 2_65-2_72
    発行日: 2017/09/30
    公開日: 2017/12/22
    ジャーナル フリー

     デザインのイメージを表現する際にオノマトペを用いる場合があるが、デザイナーと非デザイナー間でイメージ共有が成立しないことがある。この問題は、デザインの知識や経験の有無によりオノマトペに対する印象や使用法に違いがあるために生じるのではないかと考えた。そこでデザインの知識や経験の有無により、オノマトペに対する印象や用い方にどのような違いがあるのかを明らかにすることを目的とし、研究を行った。
     実験1の結果から、デザイン経験のある人は、発想したデザインのイメージを伝えるためにオノマトペを利用する頻度が高く、経験のない人に比べ各オノマトペの印象の違いが明確化していると考えられた。実験2の結果では、経験のある被験者の方が使用するオノマトペに多様性が見られた。考察により、デザイン経験のある人はデザインの特徴などを伝える中で多様な表現を用いるため、使用するオノマトペの語彙が豊富であると考えられた。 

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