デザイン学研究
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野鍛冶にみる「文化としてのものづくり」
―館山市の野鍛冶・鎌鍛冶の半生から
土屋 篤生青木 宏展植田 憲
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2023 年 70 巻 2 号 p. 2_11-2_18

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抄録

 本稿は千葉県の鍛冶文化の維持・継承・発展に向けた一連の論文の第二報である。
 鍛冶屋の「ふいご以外は自分で作れる」という矜持は、ものの本質を見極め理解する観察眼、作り方を考える段取りの自由と責任、それらを実行できる技術力のすべてを持っていることの表れであり、道具を自分で作ることが生活の基礎であることを示している。さらに、野鍛冶は生活者の求めに応じてさまざまな道具を製作する技術が必要とされる。高梨氏は、鍛冶屋の修行として、親方のそばで仕事を「見て盗む」訓練を積むことで、「見る目」を養った。そして、見様見真似で仕事をする実践の中で技術を身につけていった。これは生活の中に身を置くことで技術のみならず鍛冶屋としてのあり方を身につけていく「文化としてのものづくり」と言えるものである。高梨氏が身につけた鍛冶屋としてのものづくりの能力は、単なる技術的な能力ではなく、生活と仕事が一体となった「生業」の中で身についた生活者の姿であるといえよう。

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