2024 年 70 巻 3 号 p. 3_49-3_58
本研究では,人工物の動きが生物性認知を経て印象評価に与える影響を明らかにするため,動きを伴う植物を模した人工物(タンポポ,スイレン,麦穂)の動きを映像化し,その映像の再生速度・再生回数(1倍速(1回変化),4倍速(4回変化),16倍速(16回変化))を参加者に見せることによって,映像中の人工物の生物性認知の違い及びその生物性認知の違いが印象評価に及ぼす影響について検討を行った。男女55名の実験参加者は映像を見て,その後に動きに対する印象評価に関する質問にオンライン上で回答した。それらの回答を分析した結果,再生速度·再生回数条件の違いが,人工物に対する生物性認知に違いをもたらすことが確認された。また,植物や動物として認知する傾向の強さは,人工物の印象評価に影響を及ぼしていた。さらに,生物性認知が,生命度,愛着度,共感度などといった印象評価に影響していた。