2024 年 70 巻 3 号 p. 3_39-3_48
本研究は,1970年代の土木デザイン黎明期に,インテリアデザインから橋梁デザインへと活躍の幅を広げ,土木学会田中賞や土木学会デザイン賞などを通じて高い評価を得た大野美代子に焦点をあて,その橋梁デザイン志向と具体の造形操作手法を大野の言説から明らかにすることを目的とする。成果として大野のデザイン志向を,①場所性・周囲との調和の考慮,②橋全体の造形,構造美の考慮,③ディテールの検討,④夜間景観への配慮,⑤長期にわたる運用期間への配慮,⑥橋を渡る楽しさ・快適さの検討,⑦橋と共に暮らす人々への配慮,⑧使う人の多様性への配慮の8つに整理し,これらが「多様な空間的スケールからの検討」「短期/長期の時間的スケールを考慮した検討」「市民感覚のデザインへの反映」の3つに分類出来ることを示した。また,各デザイン志向に対応する具体のデザイン例を整理した。