デザイン学研究
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70 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • ―コンジョイント分析の応用的活用法
    渋谷 友紀, 柿山 浩一郎, 安齋 利典
    2024 年 70 巻 3 号 p. 3_1-3_10
    発行日: 2024/01/31
    公開日: 2024/03/09
    ジャーナル フリー

     対象者ニーズへの対応や効果的な人材育成サービスの提案を目指し,行動変容に向けた意欲の側面から対象理解を深めるため,本研究では学習内容に価値を見出し,自らの行動を変えようとする意欲を「行動変容に向けた意欲」とした.
     本研究の目的は,意欲の評価にコンジョイント分析が活用可能であることと,行動変容に向け内在化された意欲を評価できるという仮説を検証することである.分析に用いる属性には行動変容が望まれる場面,水準には行動変容の程度を含む目標を設定した.結果,被験者が選択した目標から現状における意欲の方向性が確認できた.また,実験刺激を介することで行動変容に取り組んでいない被験者の約半数が行動変容を含む目標を選択した.選択結果の変化から,行動変容に取り組んでいない被験者に内在化された意欲を間接的に評価できた.

  • 湯澤 幸子
    2024 年 70 巻 3 号 p. 3_11-3_20
    発行日: 2024/01/31
    公開日: 2024/03/09
    ジャーナル フリー

     大野美代子が領域横断によって追求したテーマは、単にモノの規模やスケールの拡張ではなく、人と物と空間の関係性をどのように構築するかにあった。インテリアデザイナーから環境デザイナーへ自らの職能を変化させ、領域を横断するデザイン思考によって「美しい橋」を追求した。
     デザインすることへの根源的な問いかけによって、人間が生きることのできる空間のあり方や都市の環境形成に関わる公共事業のあり方への意識改革をはじめ、人間不在の効率主義および消費偏重の商業主義への批判を行なった。
     本研究において、1970年代を中心に、アート、建築、インテリアデザイン周辺領域の思潮動向を分析し、同時代に活躍したデザイナー(倉俣史郎、三井緑)と比較することにより、大野のデザイン思考と技術の特徴を明らかにする。

  • -外来サービス改善プロセスを契機とした事例的研究
    森 絵美, 松本 正富
    2024 年 70 巻 3 号 p. 3_21-3_28
    発行日: 2024/01/31
    公開日: 2024/03/09
    ジャーナル フリー

     本研究は,病院の外来サービス改善に向けた活動のプロセスを辿りながら帰納的分析を行い,多職種が連携して取り組んだ活動の意義とそこでの介入で担った院内デザイナーの役割を明らかにすることを目的とした.ワーキンググループ活動の改善内容とそこに院内デザイナーが介入した箇所について整理した後,グループメンバーを対象とした半構造化インタビューを実施し,形態素解析と帰納的分析による評価を行った.結果,多職種連携活動の意義は部署間の共通課題を発見することであり,組織横断的な情報共有体制の構築が多角度的な解決策の模索と新規アイデアの創出に有効であった.そこに介入する院内デザイナーの役割は,主に利用者を対象としたサービス改善に向けられていたが,従来的概念にあるような直接的なデザイン業務より,むしろ創造的なデザイン思考により, 環境整備に関する橋渡しと効率的な院内運用のためのサポートをすることであった.

  • 長谷 真彩, 伊藤 孝紀, 鳥居 寛, 中山 朋紀
    2024 年 70 巻 3 号 p. 3_29-3_38
    発行日: 2024/01/31
    公開日: 2024/03/09
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,名駅南地区におけるクリエイティブ活動の特徴を把握し,名古屋地区にて活動するクリエイターの活動における練習の場やイベントに対する要望を把握することである。これにより,クリエイティブイベントおよびクリエイターの要望と評価を導出し,クリエイターの環境整備の知見へとつなげる。
     名駅南地区におけるクリエイティブイベントの活動把握調査により,SNSの活用により広域のクリエイターネットワーク形成が求められているとわかった。
     名古屋地区におけるクリエイターの要望調査により,練習場などのハード整備よりも,コミュニティ形成や発表の場などのソフト整備を求め、名駅南地区のターミナル駅や主要エリアに近接した立地を高く評価していることがわかった。
     これらより、立地や空きテナント・公共空間を活用した練習・発表の場などのハード整備への展開が考えられる。加えて、SNSを用いた広域のクリエイターネットワーク形成などのソフト面における整備によりさらなる活動促進が示唆された。

  • 大村 瑛太, 菊池 裕太, 福島 秀哉
    2024 年 70 巻 3 号 p. 3_39-3_48
    発行日: 2024/01/31
    公開日: 2024/03/09
    ジャーナル フリー

     本研究は,1970年代の土木デザイン黎明期に,インテリアデザインから橋梁デザインへと活躍の幅を広げ,土木学会田中賞や土木学会デザイン賞などを通じて高い評価を得た大野美代子に焦点をあて,その橋梁デザイン志向と具体の造形操作手法を大野の言説から明らかにすることを目的とする。成果として大野のデザイン志向を,①場所性・周囲との調和の考慮,②橋全体の造形,構造美の考慮,③ディテールの検討,④夜間景観への配慮,⑤長期にわたる運用期間への配慮,⑥橋を渡る楽しさ・快適さの検討,⑦橋と共に暮らす人々への配慮,⑧使う人の多様性への配慮の8つに整理し,これらが「多様な空間的スケールからの検討」「短期/長期の時間的スケールを考慮した検討」「市民感覚のデザインへの反映」の3つに分類出来ることを示した。また,各デザイン志向に対応する具体のデザイン例を整理した。

  • 蔡 豊盛
    2024 年 70 巻 3 号 p. 3_49-3_58
    発行日: 2024/01/31
    公開日: 2024/03/09
    ジャーナル フリー

     本研究では,人工物の動きが生物性認知を経て印象評価に与える影響を明らかにするため,動きを伴う植物を模した人工物(タンポポ,スイレン,麦穂)の動きを映像化し,その映像の再生速度・再生回数(1倍速(1回変化),4倍速(4回変化),16倍速(16回変化))を参加者に見せることによって,映像中の人工物の生物性認知の違い及びその生物性認知の違いが印象評価に及ぼす影響について検討を行った。男女55名の実験参加者は映像を見て,その後に動きに対する印象評価に関する質問にオンライン上で回答した。それらの回答を分析した結果,再生速度·再生回数条件の違いが,人工物に対する生物性認知に違いをもたらすことが確認された。また,植物や動物として認知する傾向の強さは,人工物の印象評価に影響を及ぼしていた。さらに,生物性認知が,生命度,愛着度,共感度などといった印象評価に影響していた。

  • ─備前市、那覇市、伊勢崎市、前橋市への出店事例
    大久保 達真, 服部 貴哉, 小池 りつ子, 森田 哲夫
    2024 年 70 巻 3 号 p. 3_59-3_68
    発行日: 2024/01/31
    公開日: 2024/03/09
    ジャーナル フリー

     農家と消費者とつなげるため、無人販売所をデザインし直し、コミュニケーションを誘起させる取り組みを行った。無人販売所のコミュニケーションによる農家と消費者への効果を検証するために、2021 年10月から2022年8月にかけて、備前市、那覇市、伊勢崎市、前橋市に無人販売所を出店した時の調査結果を分析し、考察を行った。農家の考えや思いを伝えるストーリーパネルや消費者の気持ちを伝える料金箱を備えた無人販売所によるコミュニケーションは、操作性や手間の問題を感じることなく、農家と消費者が自然とメッセージや気持ちが伝えられることが分かった。消費者には、農家を応援したい気持ち、野菜を美味しく感じる気持ち、努力・手間などを感じさせ、購買意欲や購買後に気持ちを共有する伝達意欲を高めることが明らかになった。農家には、事業活動の面で有益な情報や知識を提供し、また心理面ではモチベーションの高まりや消費者の反応の嬉しさ、消費者の気持ちが伝わった、分かったと感じさせることが分かった。

  • 張 宇欣, 佐藤 浩一郎, 魯 云, 寺内 文雄
    2024 年 70 巻 3 号 p. 3_69-3_76
    発行日: 2024/01/31
    公開日: 2024/03/09
    ジャーナル フリー

     本研究ではラミー糸を用いた組紐と異なる種類のマトリックスを用いた複合材料の引張特性を明らかにすることを目的とした。そこで,ラミー糸を用いた組紐を作製し,それらを変成シリコーンゴム,2液型シリコーンゴム,エポキシ樹脂とそれぞれ複合化した。さらに組紐のみ,シリコーンゴムのみ,エポキシ樹脂のみのサンプルを作製し,引張試験によってこれらの引張特性について検討した。その結果,組紐とエポキシ樹脂を複合化したサンプルでは組紐が引張強度の増大に影響するのに対して,組紐とシリコーンゴムを複合した試験片では,引張強度には大きな違いは認められなかった。一方,破断伸びには大きな違いがみられた。2液型シリコーンゴムと複合した場合の破断伸びは,変成シリコーンゴムと複合した場合よりも約34%大きくなることが確認できた。

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