抄録
我が国の科学教育・理科教育・数学教育は、主要な学会だけではなくさまざまな「理科」「数学」関連学会がある。それぞれの学会は独自の視点に立って「科学教育」「理科教育」「数学教育」の研究を推進している。学会等を基盤にする科学教育研究と学校現場における科学教育・理科教育実践には本来相互関係があるはずであるが、実際のところ「研究は研究」、「実践は実践」と相互に乖離がある。今後、我が国の科学教育研究のあり方を検討し、研究と実践との関係強化を図ることは重要と考える。.アメリカ合衆国におけるNSTA(National Science Teachers' Association)は約60年間の歴史を持つさまざまな学会や組織の連合会であるが、小、中学校、高等学校教師、大学の教員、教育関係者など数万人の会員を擁する巨大な組織である。この学会の歴史の中で、教材開発、指導法、カリキュラム、評価、教員養成など多くの科学教育研究を強力に推進するとともに、教育実践の改善にも取り組んできた。NSTA会長であるDr.Michael J. Padilla氏(University of Georgia)を招いて、NSTAの歴史、現状、今後への課題などのさまざまなトピックについて話題提供していただく。加えて、科学教育は、数学教育、技術科教育、教育工学など、多くの関連学会とも連関している。また、国際誌Educational Studies in Mathematicsの前編集長、Kluwer(現Springer)の数学教育学叢書の編者を務める傍ら、文化化をはじめとした数学教育・理科教育の文化的問題を研究してきたDr.Alan Bishop氏に、話題提供していただく。そして、その話題提供を手がかりに我が国の科学教育研究のあり方について考察する。